オススメの眼鏡はありますか?

『良い眼鏡ってなんだろう』

『良い眼鏡が欲しい。オススメはありますか?』という質問を最近はよく受ける。ここ数年で眼鏡の立ち位置はかなり変わった。眼鏡が本来持つ視力の補正器具としての意味合いが薄まり、よりファッションアイテムとしての立ち位置が強くなった。より多くの人が眼鏡というアイテムに興味を抱いた結果、僕みたいな小市民にまでこんな質問が来るようになるのだから、時代の節目を直接肌で感じているような感覚にもなる。話を戻すが冒頭の問いをもらった時の僕の回答は『分からない』だ。別の言い方をすると『情報が少なすぎて答えられない』だ。お陰様で良い眼鏡とは何なのかを考えることが増えてきたので、ここで僕なりの私見を伝えていきたいと思う。読むのが億劫な方のために記事の内容を端的に要約すると『良い眼鏡が欲しいなら良い眼鏡屋を見つける必要がある』ということを書いている。理由が気になる方はこの後の文章を読んでほしいし、この要約を読んでしっくり来ないのであれば無理に読まなくても良いと思う。長いので。

 

①『良い眼鏡(=掛け心地が良い眼鏡)』という場合

服にもサイズがあるように、当然ながら眼鏡にもサイズがあるのは想像出来ると思う。そして眼鏡はファッションアイテムであると同様に視力補正具でもある。つまりは道具だ。道具は適切な用途で使えないと本来の性能を発揮出来ないことは理解出来る筈だし、その点では眼鏡は靴に近い。サイズやワイズの合っていない靴を履くと歩きにくいことはきっと誰しも経験があると思う。眼鏡だって同じだ。顔幅に合っていない眼鏡を掛けて掛けやすいことは殆どない。サイズが合っていない眼鏡であっても、眼鏡屋で調整(=フィッティング)すればある程度は掛け心地を良くすることは出来るが、それならば最初から顔のサイズに合っている物を選んだ方が遥かに良い。サイズが合っている眼鏡は掛けやすく、そして調整をすればより掛け心地が良くなるからだ。顔幅よりも小さすぎる眼鏡は掛け続けるとフレームに負荷がかかり壊れやすいし、掛け心地もキツくて痛い。顔幅よりも大きすぎる眼鏡はズレ落ちやすいだけでなく、局所を狭める必要があるのでこちらも痛みが伴う。だからこそ先ずは顔幅に合った眼鏡を選ぶことが、掛け心地が良い眼鏡を選ぶ大前提になる。ここまで読んでもらったのであれば分かると思うが、万人に掛けやすい眼鏡など存在しない。だからこそ他人が掛けやすいと言った眼鏡が、必ずしも自分にとっても掛けやすいものとは限らないという認識を今一度持ってほしい。

そして眼鏡の掛けやすさにはフィッティングがかなり重要になる。フィッティングとは売り物の眼鏡を自分の顔に合わせて調整してもらうことだ。『何を当たり前のことを言っているんだこいつは』と思うかもしれないが、眼鏡はフィッティングをした上で掛ける物という認識が、世の中ではそれほど一般的ではないようなのでここで改めて記述した。眼鏡は鼻と耳に引っ掛けつつ、テンプルを側頭部に沿わせて顔に固定されるが、当然ながら売られている眼鏡をそのまま掛けても自分の顔にフィットする訳がない。顔にフィットしない眼鏡を掛けても本来の性能は引き出せず、キツくて掛け難いか、もしくは緩くて直ぐにズレ落ちるかのどちらかになる。それでもフィッティングをしていない眼鏡を掛けている人は沢山いる。服屋や雑貨屋で買った眼鏡はフィッティングがされないので、必然的に未調整の状態で掛けることになるからだ。繰り返しになるが眼鏡はフィッティングがかなり重要で、オーダーメイドで作ったものでない限りは掛け始めから満点の掛け心地の物にはそうそう出会えない。少なくとも僕は出会ったことがない。だからこそ掛け心地が良い眼鏡を探しているのであれば、自分に合うサイズ感の眼鏡を探すのと同じくらい、調整が上手いスタッフのいる眼鏡屋を探すのも重要だと思う。自分と波長の合う美容師さんがいるサロンには通い続けるだろうし、眼鏡屋もそれと同じだ。だからこそ良い眼鏡が欲しいのであれば未調整のままフレームを売る環境では買わないで欲しい。それだけは強く伝えたい。

 

 

②『良い眼鏡(=品質が良い眼鏡)』という価値観の場合

前述した①を読んで頂くと分かると思うが、掛け心地が良い眼鏡が欲しいのであれば、眼鏡の品質と同じくらい眼鏡屋(=技術者)によるフィッティングが重要になってくる。そしてどんなに高品質とメディアやSNS上で謳われている眼鏡であっても、顔とサイズ感が合っていないものを掛けてしまうと性能を最大限に引き出すことは難しい。そしてこれは服や靴を含めたあらゆる商品に言えることだが、高価格=高耐久という幻想は捨ててほしい。眼鏡も同様に値段が高いから一生使えるわけではない。プラスチックフレームなら空気に触れているだけで内部の水分量が減り枯れていくし、メタルフレームも使用による金属疲労は避けられない。もし品質=耐久性と捉えているのであれば値段とのトレードオフが難しいことを考慮するべきだ。どんなに高い眼鏡でも運が悪ければ一度の衝撃で壊れるし、逆に安価な眼鏡でも運が良ければ何年も使える。こればかりは使用者の使用環境に左右されるとしか言えない。もし眼鏡の耐久性を高める一番のコツがあるとすれば、それは『大事に使う』こと以外に無い。

 

 

③『良い眼鏡(=見やすい眼鏡)』という価値観の場合

見やすいということも眼鏡にとってはとても重要なファクターだと思う。眼鏡というと大体の場合、まず最初にフレームをイメージするが、そもそもフレームは眼鏡のレンズを守るための外枠であって、実際のところ物を見やすくするレンズが眼鏡の主役だ。これは僕のように幼少期から眼鏡を掛けている人にはなんとなくでもイメージ出来ることではないだろうか。

そして見やすさの話になるが、いくつか考えないとならないことがある。例えば『遠くが良く見える=見やすい眼鏡』ではないということだ。詳しく書くと長くなるので省略するが、遠くが見やすい眼鏡で長時間デスクワークをすると目が疲れやすくなる。どういった環境で生活をしていて、何をする時に使う眼鏡にしたいのかをまず考えなくてはいけない。簡単に言えばレンズの度数設定だ。これだけ眼鏡が取り沙汰されるようになっても、なかなかこの認識が普及しない。長時間使うと目が疲れるのであれば、もしかするとレンズの度数と使用環境が合っていない場合もある。

レンズには光学中心があり、簡単に言えばこの光学中心に瞳の中心が来ていると最も歪みがなく見やすく出来る。例外はあるがこれも細かく語ると長くなるので割愛する。レンズの中心から離れれば離れるほど物は歪んで見辛くなるので、この見辛さを解消するためにレンズの性能がある。見やすさを重視したいのであれば高性能なレンズを選べば良いと思うが、ここで注意したいのが『見やすさ』の指標は人それぞれ違うということだ。例えばほんの少しでもレンズを通して見た世界が歪めば見づらいと感じる人もいるし、反対に少しの歪みであれば気にならない人もいる。見やすいと感じる感覚は人それぞれだからこそ、どこまでレンズにお金をかければ満足のいく見え方になるかは人によって異なる。高級ヘッドホンと安価なヘッドホンの音質の違いにお金をかけても良いと思えるかどうかは人それぞれ違う、あの感覚に近いと思う。視覚も聴覚も結局は感覚器官だからこそ、人それぞれ見え方に違いがあるし、見え方の好みがあるからこそ、『見やすい』の価値観も人それぞれということになる。因みに現在の日本で流通しているのは殆どがプラスチックレンズだが、レンズの表面に傷が付いたりコーティングが剥がれたりした場合は修理出来ず、新しく購入するしかないことも付け加えておく。高価なレンズでも安価なレンズでもそれは同様だ。レンズを長持ちさせたいのであれば、フレーム同様に『大事に使う』ことをお勧めしたい。傷付いたりコーティングが劣化したレンズはお世辞にも見やすいとは言えないと思うので。

良い眼鏡=良く見える眼鏡という価値観の方の場合は度数やレンズのことを意識してもらいつつ、先ほどお伝えしたレンズの光学中心のことも考えてほしい。そして何を見るか、何を見やすくしたいかを考えた時には、フレームのサイズや形状が重要になってくることも認識してほしい。レンズの中心近く(=一番歪みが少なく見やすい部分)に瞳の中心がくるかどうかは、結局はフレームのサイズ感が重要になってくるし、フィッティングでフレームの幅や掛け心地は調整出来てもレンズサイズは変えられない。つまりはフレーム選びの段階で見やすい眼鏡になるかどうかの戦いは始まっているということになる。ここまで書けば何となく予想できると思うが、良い眼鏡屋ならフレーム選びの段階でサイズが合った物を薦めてくれる。そしてフィッティングでどこまで掛け心地の調整が可能で、レンズはどれくらいの度数と性能の物を選べば良いかもフレーム選びの段階で大凡の筋道を立てながら提案してくれる。服屋や雑貨屋で眼鏡を買う場合それは不可能だ。だからこそ良い眼鏡が欲しいのであれば良い眼鏡屋を見つけることが何よりも重要になってくる。

見やすさについての補足になるが、ズレ落ちた眼鏡を掛けていたり、フレームが歪んでいたりするとレンズの光学中心で物を見れないので、レンズの性能を十分に発揮出来ない。特にレンズの度が強い場合はレンズが重くなりやすく、その重量によって眼鏡がズレ落ちやすくなるので、定期的なフィッティングが不可欠になる。そのためにもきちんとしたフィッティングをしてくれる眼鏡屋を見つけることが重要になってくることを付け加えておきたい。(ズレ落ちて掛けることを前提でレンズの光学中心を通常とは異なる位置にして作るフレームもあるし、強度数のレンズでも軽くする方法はある。それ以外にも例外は無数にあるが、ここでは長くなるので書き記さない)

そしてレンズの光学中心や性能についても補足や例外は多岐に渡りあるためここでは割愛するが、そちらについても眼鏡屋なら誰でも知っている知識なので売り場で聞いてみてほしい。自分がどんな眼鏡が欲しいかや、どんな物を見やすくしたいかを伝えれば、きっと丁寧に教えてくれるはずだし、そこで親身になってくれる眼鏡屋が良い眼鏡屋だと僕は思っているので。

 

 

④『良い眼鏡(=軽い眼鏡)』という価値観の場合

太セルという区分の分厚いプラスチックフレームが幅を利かせているからか、その重量の重さに馴染めず、重いフレーム=掛けにくいフレームという認識が蔓延っている気がするが決してそんなことはない。ここまで読んでいただいた方なら何となく想像出来るだろうが、重いフレームでもフィッティングが出来ていれば何とかなる場合もある。重くても重量のバランスが整っているフレームなら調整すればピタりとハマって気持ち良い掛け心地になるし、そして顔のサイズ感と合っていればフィッティングで調整出来る幅が広がるので、掛け心地はかなり修正できる。繰り返しになるがここでもフィッティングの大切さをお伝えしたい。だからこそ調整をしてもらえない服屋や雑貨屋で眼鏡を買うことは僕はお勧めしない。眼鏡選びの最初の段階で、眼鏡屋に顔のサイズ感とのバランスを見極めてもらいつつ、フィッティングをしてもらったフレームであれば、重いフレームであっても掛けやすくする余地は十分にある。

そして太セルの対極として挙げられるメタルフレームだが、確かに軽さには軍配が上がると思う。だがそのフレームの細さから顔への設置面積が狭く、ズレやすくもあることを考慮する必要がある。ズレないようにキツめのフィッティングにすると、結局はフレームが顔や耳に食い込んで痛くなる場合もある。メタルフレームはフレームが細いからこそ、食い込むとこれはこれで痛いことも考慮してほしい。ここでも顔とフレームのサイズ感を考えることや、眼鏡屋のフィッティングの技術力が重要になってくるので、繰り返しになるが良い眼鏡屋を見つけることが肝要になってくる。

 

 

 

まとめ

①眼鏡にもサイズがある

→掛けやすい眼鏡が欲しいのであれば、顔のサイズ感と合った眼鏡を選んでほしい。万人にとって掛けやすい眼鏡は存在しないということを意識してほしい。

②眼鏡はフィッティングが重要

→いくら良い眼鏡であっても未調整のままだと性能を発揮出来ない。自分の顔に合わせて調整(=フィッティング)してもらうことで初めてフレームは完成する。

③度付きの眼鏡なら何を見たいか考えて

→度付きの眼鏡を作りたいのであれば、フレームと同じくらいレンズの種類や度数設定が重要になる。自分がどんな環境でその眼鏡を使いたいのかをイメージする必要がある。

④軽い眼鏡が必ずしも掛けやすいわけではない

→重いフレームでも調整次第で掛けやすく出来る場合はあるし、反対に軽いフレームでも調整が上手くできていないと掛けにくくもなる。

 

 

①から④まで全てを考慮した上で眼鏡を選ぶのはなかなかの重労働だと思う。だからこそ繰り返しになるが、良い眼鏡屋を見つけてほしい。フレームの見立てをしてくれて、フィッティングが上手く、視力測定やレンズの知識が豊富であり、こちらの疑問点に誠実に答えてくれる眼鏡屋はきっと良い眼鏡屋だ。最初は探すのに苦労するかもしれないが、一度出会ってしまえばこの先何十年の付き合いになっていく筈だ。完璧な一本に出会えた時のあの感動を味わってしまうと、きっともう戻れない。眼鏡の沼は本当に深い。そして深淵があるからこそ探究しがいがある。だからこそ最初の関門である良い眼鏡屋探しが重要になってくることを、最後にもう一度書き記しておきたい。

冒頭に戻るが、『良い眼鏡が欲しい。オススメはありますか?』とサクッと訊かれた時、僕はここに書き記したような内容を脳内で反芻した上で『分からない』と答えている。眼鏡はそんなに簡単に答えを提示出来る物ではないし、考慮すべきことが無数にあるからだ。コスパタイパ重視の安直な答えなど存在しないが、だからこそ自分なりの正解を見つけていく過程に面白みがあるコンテンツでもあることを併せてお伝えしたい。幸運なことに今の世の中なら情報の収集源は無数にある。仕入れた情報をもとに是非実店舗で試着を繰り返して研鑽を積んでほしい。結論に達するまでの過程に沢山の気づきがある筈だし、その気づきはネット上よりも実店舗に沢山転がっている。皆様が良い眼鏡屋に出会えることを祈っている。

1件のコメント

  1. ピンバック: 2025 BEST BUY ① - 弥栄

コメントはできません。