『ショーツを穿かない人に勧めたいショーツ、あります』
SHINYAから新作のショーツAvilaが入荷した。入荷前日は東京に雪が降ったタイミングで、『何故このタイミングでショーツなのか』という苦笑にも似た声を多数頂戴したが、何よりも僕ら自身が一番びっくりしているので、どうか気持ちを鎮めてほしい。
そしてこの新型ショーツだが、これまで提案してきた他のパンツとは明らかにバランスが異なり非常に面白い一本になっている。うちのお客さんはショーツを穿かない人が多いことは重々承知しているが、それでも敢えてこのショーツをお勧めさせてほしい。個人的な感想になり申し訳ないが、『ショーツ以上パンツ未満』という穿き方が出来る一本になっていると思う。理由は後ほど説明していくが、この立ち位置だからこそ普段ショーツを穿かない人でも穿けるし、同時にショーツならではのスタイリングの楽しみ方も出来る可能性があると感じている。みんな一石二鳥って言葉が好きでしょう?
入荷した際はあまりの物量に愕然としたが、今は予想以上の売れ行きに逆に驚いている。新しい提案をしたいからこそしこたま作ったが夏まで在庫が保ちそうな予感が全くしないので、このタイミングで紹介させていただく。声を大にして言いたい。このショーツは良いぞ。



新型のショーツAvilaは膝下丈のレングスだ。デザイナーが海外のスナップ写真で見つけた、ヨーロッパモデルがラフに穿いているワイドショーツをイメージソースにして作った一本になる。ヨーロッパの人々に比べて日本人はどうしても脚が短いので、特に膝下丈ショーツのスタイリングはバランスが難しいと感じることが多い。僕自身が身長168cmと小柄なこともあり、膝下丈のショーツでは似合う個体に巡り合った経験が今まで殆どなかった。その点このAvilaは日本人が穿くことを想定してサイジングを調整しているので穿いても違和感は無いし、少なくとも僕はとてもしっくりくるバランスで穿けているし、何ならスタイルも良く見える気がする。
生地は肉厚でハリ感のあるカツラギ素材を使用している。程良い光沢感と綾織のテクスチャの両方を味わえる生地なので、ドレスやスポーツ・ストリート等幅広いスタイリングと調和してくれる。ご存じの方も多いと思うが、カツラギは綾織り(ツイル素材)の一種で、厚みがありながらも特有の柔らかさが味わえる素材だ。厚みのある生地だからこその耐久性と、平織りの生地に比べて皺になりにくいことも魅力で、つまりはヘビーユースで使い倒せる生地だということをお伝えしたい。



ワイドショーツは脚のシルエットを拾いにくいので、体型を選ばず幅広い人にリーチする一本に仕上がっていると思う。そしてワイドショーツのボリュームとハリ感のあるカツラギ素材の恩恵で脚とショーツの間に空間のゆとりが生まれ、穿いていて非常に涼しく快適だということもお伝えしたい。生地が厚いと穿いていて暑いのではないかと心配する方もいるが、恐らくは杞憂に終わると思う。主観だが夏場にデニムを穿いて過ごすよりも1万倍快適なはずだ。
個人的にショーツの最大の鬼門は丈の短さだと考えていて、丈が短いことからくる特有のスポーティーさが、見方を変えるとカジュアルさに転じてしまい、それがショーツを穿きにくくする要因になっていると考えている。そして丈が短いということは脚のシルエットが如実に出るということにもなる。脚の長さや太さがダイレクトに見た目に反映されてしまうがために、パンツのボリュームで脚のラインを隠せるロングパンツと比べて難易度が高いと感じてしまうのだとも思う。だからこそそうした苦手意識のある方にこのAvilaをお勧めしたい。膝下丈のレングスは脚のラインを拾いにくいし、寧ろボリュームのあるアイテムを下半身に持ってくることでスタイルが良く見え、体型補正効果もあるので安心して穿いてほしい。前述したように適度なハリと厚みのあるカツラギ素材なのでショーツのボリュームが崩れにくく、ショーツ特有のスポーティーな印象は抑えめだ。いつものように綺麗めなスタイリングに合わせて穿いても何の問題もなくすんなりと馴染んでくれると思う。
この後で実際にこのAvilaを使ってスタイリングを三つ組んでみた。合わせ方が分からない方の参考になれば幸いだ。


①綺麗目スタイリング
前述した通りショーツを穿く際の最大の鬼門は丈の短さからくるスポーティーさとカジュアルさだ。丈の短さ問題は膝下丈のこのショーツはクリアしているが、そもそもショーツはカジュアルアイテムであることを改めて意識する必要がある。どう転んでもショーツはカジュアルなカテゴリのアイテムだし、だからこそ何も考えずにショーツに更にカジュアルなアイテムを足してスタイリングをしていくと、いくらこのAvilaがカジュアル感少なめの一本でも限界がある。なので本当にちょっとしたことにはなるが、僕自身がショーツを穿く際に気をつけているポイントを共有していきたい。
例えば上の写真のように綺麗めなアイテムを組み合わせてスタイリングを組むのはどうだろうか。この時はジャケットにハイソックスにローファーを合わせている。ショーツがカジュアルならばそのカジュアルさを他のアイテムで相殺してしまえば良い。カジュアルアイテムのショーツ(アイテム数1)に対して、綺麗目アイテムのローファーとジャケットとハイソックス(アイテム数3)なので、綺麗目なテイストが2点勝る。小学生でも分かる足し算と引き算だ。綺麗目なテイストのアイテムの点数が多いということは、この文脈でショーツを穿くと『ハズし』のアイテムになる。ハズしはスタイリングを組む際にとても重要な要素だし、それがこんなに単純なことで得られてしまうのだから旨みしかない。特にうちのお客さんは綺麗目のスタイリングを好む方が多いようなので、いつものスタイリングに試しにこのショーツを組み込んでみてほしい。それだけでハズしになる。
あとはソックスの長さはある程度気にしてほしい。ショーツにスニーカーソックスを合わせると一気におじさんくさくなるし、ショーツの持つスポーティーさが暴走するので、出来ればふくらはぎ丈のソックスを推したい。ショーツのスポーティーさを押さえ込むためには靴選びも同様にに大切で、スニーカーよりは革靴の方が個人的には好みだ。前述したように綺麗目アイテムとカジュアルアイテムの足し算引き算になるので、他の部分で綺麗目なアイテムを足せるのであれば足元はスニーカーでも良いと思うが、重ね着が難しい夏場は綺麗目な要素を足していくことが難しい場合が多いので、だからこそ一番簡単な解決策は足元に革靴を持ってくることだと思う。サンダルならグルカサンダルのようにボリュームのあるサンダルが、このワイドショーツAvilaには似合うと思う。



②ボリュームスタイリング
新型ショーツAvila自体にボリュームがあるので、いつも着ているシャツやカットソーと合わせてもメリハリのあるスタイリングが完成するが、このショーツのボリュームを活かす方向でスタイリングを組むのも面白いと思う。せっかくの膝下丈のワイドシルエットだからこそ、例えばブーツを合わせてみるのも良いはずだ。
ショーツは丈が短くなればなるほどスタイリングが難しくなる。男性のスタイリングにおいて下半身の肌を見せる面積が一定以上に広くなると、ヌケ感を通り越して不審者感が強くなるケースが往々にしてあることは何となくでもイメージ出来るハズだ。極端な例を出したが今回の場合も同様で、ショーツを穿いている場合でも肌見せを少なくすることを意識してスタイリングを組むとカジュアル感が消失し、そしてほんの少しだけ見える肌が適度なヌケ感を演出してくれる。ブーツを履く際はソックスを履き口から少し見せてあげるとスタイリングがぐっと馴染むこともお伝えしたい。


③スポーティースタイリング
普段からスニーカーしか穿かない人もいると思う。先ほどから散々ショーツのスポーティーさを相殺するスタイリングばかり紹介してきたが、逆にそのスポーティーさを活かすスタイリングも紹介したい。ショーツにスニーカーを合わせるとスタイリングはどう頑張ってもカジュアルに寄る。それはAvilaが如何に綺麗目なショーツであっても抗えないことだ。なのでいっそのことスポーティーなスタイリングに全振りしてみてほしい。スタイリングイメージはバスケットボール選手の普段着だ。
今の時期なら合わせるトップスはナイロンジャケットやスウェット、フーディーをお勧めしたい。Algernonで昨シーズンに作ったMA-1との組み合わせが僕は好きだ。オーバーサイズなショーツだからこそ合わせるトップスはボリュームがあっても上手く纏まる。夏になったらTシャツを合わせても良いと思う。僕ならTシャツはショーツの中にインして、ベルトでウエストマークしてスタイリングにメリハリをつけて穿着たい。
スニーカーに合わせる際はソックスはある程度長さがあるものがやはりお勧めだ。①の綺麗目スタイリングの際にもお伝えしたが、丈が短いソックスはカジュアルな要素が強く、ショーツのカジュアルさを悪い意味で加速させてしまう。繰り返しになるがショーツの最大の鬼門はそのカジュアルさであって、だからこそそのカジュアルさを上手く飼い慣らすことが出来れば攻略は容易だ。なので今回のようにスニーカーとの組み合わせでショーツを穿く際は、長さのあるソックスの方がバランスが取りやすいことが多いと個人的には感じている。
ショーツは涼しい。フルレングスのパンツに比べて熱が籠りにくいので真夏の不快感がかなり軽減される。そしてショーツというアイテムのバランスはスタイリングの起爆剤になる。フルレングスのパンツでは不可能な肌露出のバランスは、マンネリになりがちな夏のスタイリングを刷新してくれる。そして当然ながらショーツは春夏が主戦場のアイテムなので季節感を表現出来る。素材やテイストで季節感を表現出来る人は当然ながらお洒落に見えるし、少なくとも僕は季節感を意識してスタイリングを組みたいと日頃から思っている。せっかく四季がある国に生まれたのだから、出来うる限りその季節を楽しみたいし、スタイリングでもその楽しさを表現したい。季節を楽しみ尽くすのであれば、四季折々に最適な服装をすることが肝要だとも思う。
ショーツの持つカジュアル感は少なめで、でもロングパンツでは味わえない新しいバランスのスタイリングも楽しめてしまう。だから改めて声を大にして言いたい。このショーツは良いぞ。
