『ショートパンツは穿かないです。おっさんくさくなるじゃないですか』
僕はお店でお客さんと話をする時間が長いと思う。あれやこれやと話していると割とパーソナルな価値観に触れることが稀にあって、冒頭の言葉もお客さんがふとした瞬間にポロリと漏らした一言だ。飾らない言葉だったからこそ、いまだに心に強く残っている。
冒頭のショートパンツ=おっさん理論に少なくとも僕は全面的に同意する。おっさんの僕でもその気持ちは痛いくらいに分かる。おっさんを代表して申し訳ないと謝りたいくらいだ。恐らくはここで理由について述べると炎上するので割愛するが、気になる人はお店で訊いてみてほしい。多分この命題についての私見は一時間くらいとくとくと語れると思う。
逆説的な定義にはなるが、ならばおっさんくさくならないショートパンツの穿き方は何なのかを提示することはできると思う。万人に納得してもらえる価値観(そもそもそんなものは世の中には無い)ではないだろうが、それでも僕自身はショートパンツをよく穿くので、世間一般のおっさんよりはショートパンツのスタイリングについてあれこれ考えて生きているのは確かだ。だからこそ少しばかりは説得力のあることを語れると自負している。

ショートパンツを穿く際の一番の鬼門は、ショートパンツが持つそのカジュアルさだと考えている。楽に穿けることは良いことだ。でも楽して穿けても周りからだらしなく見られてしまっては本末転倒だと思う。楽に着れることと楽しているように見えることはイコールではない。だからこそショートパンツの時は、僕はいつもより一層スタイリングからカジュアルさを消すことに意識を向ける。

①化繊のギアショーツは選ばない。アウトドア感が強く出てカジュアルになりがち。
②ギアショーツを穿く際はカジュアルな色味や柄物は選ばない。
③色柄物ギアショーツの際はトップスはシャツを選ぶ。シャツは長袖を選ぶことが多い。
まずショートパンツと聞いて今の日本で真っ先にイメージされやすいギアショーツについて書いてみた。実際おっさんが穿いているショートパンツは大体ギアショーツだと思う。僕自身は前述した通り、ショートパンツスタイルのカジュアルな感じにあまり好ましい感情を抱いていないので、ギアショーツを選ぶことはあまりないが、それでも穿く際にはあれこれ考えた上でスタイリングを組んでいる。①〜③ともに方向性は一緒で、カジュアルな雰囲気を減らすことを意識していて、特に③はギアショーツに限らず、ショートパンツを穿く際には効果的な方法だと思っている。繰り返しになるがショートパンツスタイルの一番の鬼門はそのカジュアルさで、だからこそショートパンツにTシャツを合わせてしまうとカジュアルになりすぎる。ショートパンツを穿いて脚を出したのであれば、逆にトップスでは肌を隠してバランスを取るだけで一気にカジュアルさが減る。半袖のシャツではダメかと言われたりもするが長袖がベストだ。理由はおっさんだから。Tシャツよりはまだ半袖シャツを着た方がカジュアルさは低減するが、それは若者がやるからこそ生きるスタイルだ。勿論半袖シャツにショートパンツを穿いて似合うおっさんもいるだろうが、そういう人は基本的に何を着ても似合うということを覚えておいてほしい。長袖シャツが暑いという人はリネンシャツを着てみてほしい。コットンの半袖Tシャツよりも断然涼しいし、袖を適当に捲るだけでも腕周りにアクセントが出来てスタイリングのポイントになってくれる。ショーツを穿くなら長袖シャツを着ることは全力でおすすめしたい。

④ショートパンツにTシャツを合わせるならタックインしてみる。
繰り返しになるがショートパンツはどう頑張ってもカジュアルなアイテムに属するので、如何にカジュアルさを低減するかを考える必要がある。スタイリングのメリハリもその一つだ。Tシャツをタックインするとスタイリングにメリハリが出るので僕はよくやる。ダボダボとしたTシャツとショートパンツの組み合わせは、ショートパンツのカジュアルさがより一層増すのでやらない。特にここ近年のトレンドの変化でTシャツのサイジングがジャスト寄りになってきているので、意識的に上半身はコンパクトなサイジングを選ぶようにしている。『トレンドなんて関係ない。好きな服を好きに着れば良い』という価値観には僕も全面的に同意するが、『知っていてやらないのと、知らないからやれない』のは違うと思うので、自身の好みかどうかは置いておいてトレンドの把握はしておいて損はないはずだ。もしベルトループがあるならベルトをしておくとなお良いと思う。腰回りにワンポイントがあるだけでスタイリングがグッと締まる。

⑤ショートパンツを穿くなら足元は革靴で
ショートパンツのカジュアルさを減らすには革靴というチョイスも良いと思う。今なら特にローファーを推したい。ショートパンツにスニーカーやサンダルを合わせるとカジュアルさが増すので、僕自身は出来るだけ革靴を選ぶようにしている。スニーカーやサンダルを履く場合はその他の部分のスタイリングでより一層綺麗めな要素を加えてバランスを取るようにするが、そもそもの話でショートパンツとローファーは相性が良いから僕はよく一緒に合わせて着ている。革靴に合うショーツなら断然天然素材の、あわよくばクラシカルなスタイルのものをおすすめしたい。例えば腰回りにタックが入っているデザインになるだけで、グッと革靴が映えるようになる。靴下はベーシックカラーのものを選んでも良いけれど、ワンポイントで色を差すのが僕は好きだ。

おじさんくさくなりがちなアイテムのショートパンツではあるけれど、その弱点を差し引いても有り余るくらいの快適さがある。兎に角涼しい。酷暑の毎日だからこそこの快適さを少しでも多くの人に味わって欲しくて文章にしてみた。リネンのショーツなんて一度穿いたらやめられなくなると思う。それくらい涼しくて快適だ。ちょっとの工夫と心配りで、ショートパンツのカジュアルさ(ともすればだらしなさ)はグッと低減できるはずだから、もしよければ試してみてほしい。
