親愛なる他所者

『首は隠せ』

アパレルで働き始めた当初、ファッションの権化のような職場の先輩から『お洒落の肝は首だから』と何度も言われたことを今でも覚えている。首、手首、足首といった『首』とつく部分を如何に隠し、如何に出すか。そして如何にしてそこにポイントを持ってくるかでスタイリングの完成度が変わることを日々僕に身を持って教えてくれた。あの時の教えは今では言葉にするまでもなく感覚的に分かるようになったし、おかげで日々意識してスタイリングを組むようになった。その点では僕の『首』信仰(と言っても差し支えないと思う)は最早ちょっとしたものになっていると自分では思っている。

僕自身は今の時期は特に『首元を隠す』ことに執着している。ジャケットはスタンドカラーのタイプが好きだし、トラックジャケットもよく着ている。コンパクトなマフラーを巻いて首元を隠すのも好みだ。そして何よりも好きなのがタートルネックのニットだ。個人的には冬のスタイリングの核となるアイテムで、週の半分以上はタートルネックニットを着ている。単体で着ることもあるし、スタンドカラーのベストのインナーに合わせることもある。あとはシャツのインナーにも構わずにタートルのニットを合わせる。理由としては単純で、タートルネックで首元を隠すことによって生間れるバランスが好きだからだ。防寒的な観点からもタートルネックニットは優秀ではあるが、兎にも角にもまず第一にこの奥ゆかしい上品さが好きだ。タートルネックニットにジャケットを合わせて大人っぽくも振れるし、スウェットやパーカー、軍物のアウターやコート、デニムジャケットなどのカジュアルな服ですら、タートルネックニットで首元を隠した途端にお上品な塩梅が加味される。これだけで小慣れた雰囲気が醸し出せるのだからスタイリングの応用力は大したものだと思う。タートルネックニットは良いぞ。

 

 

 

Algernonから新型のドライバーズニットFremderをリリースした。上記したように首元を隠すことを冬のスタイリングの肝としている僕が提案したいタートルネックニットだ。最大の特徴は首元の長さ。一見すると長過ぎるくらい長めにしてもらった。そしてドライバーズニットではあるがハーフジップ仕様にしてみた。これはどちらも僕の個人的な趣味嗜好からくるものなので万人ウケするだなんてさらさら思っていないが、結果的には『探してみると中々見つからないバランスの服』というAlgernonのいつも通りの塩梅に着地した。この捻くれ具合がとても気に入っている。探して見つかる服ならそれを買えば良いしね。

 

 

 

このドライバーズニットのベースにしたのは私物のドイツ軍のトレーニングジャージだ。何年も愛用しているので実際に僕が着ている姿をご覧になった方も多いと思う。あの緑色のジャージが元ネタだ。このジャージを僕が気に入っている最大の理由がネックの高さで、通常のジャージに比べてもかなり長いネック高が非常に調子がよい。しかし僕自身は非常に気に入っているこのネックの高さも、世の中的にはあまり人気ではないらしく、近年物のジャージやドライバーズニットを探してみても、中々このハイネック仕様の個体を見つけることが出来なかった。なのでこの愛すべきジャージをベースに作ったのがFremderになる。

ベースにしたドイツ軍ジャージはデザインこそ気に入っているものの、お世辞にも着やすい服ではなかった。タフでガサついた肌当たりとタイトなシルエットは、特に冬の乾燥した肌に触れるとチクチクとして気になるし、このサイジングはどう逆立ちしても今の時代のバランスではない。その辺りを僕がいつもの如く超感覚的なフワフワとした言葉でデザイナーに伝えたところ仕上がってきたのがこの個体だ。

 

 

 

ベースにしたトレーニングジャージと同様にガサっとした見た目ながらも、実際に着てみると柔らかいウール素材で作ってもらった。化繊のジャージでは決して表現出来ない柔らかな落ち感のある表情は、上質なウールを使用しているからこそ味わえる贅沢だと思う。僕はこのウール特有の表情がとても好きだ。ネックは長いのでくしゅくしゅと弛ませて着てほしい。マフラーを巻いた時のように首元にニュアンスが生まれる。オリジナルのジャージではチープだったジップも当然の如くYKKのエクセラファスナーに変更している。ドライバーズニットはジップが主役だと思っているので、この部分はケチりたくなかった。身幅も腕周りも敢えてオーバーサイズにはしておらず、程よいゆとりのサイジングに着地させているのもいつも通り。僕はドライバーズニットをあくまでもインナーと考えており、ここでオーバーサイズにし過ぎたり、厚手過ぎる生地で作ってしまうと、この上からアウターを着た際にもたつくのが嫌だった。アウターを上から着ることを前提として作ったドライバーズニットとしては、個人的には一つの最適解を提案出来たと思っている。

程よくゆとりのある身幅に対して、裾部分にはリブを取り付けた。腕周りも同様で、腕周りの太さに対してキュッとしまったやや長めの袖リブを配している。そのまま着てもメリハリのあるバランスになるようにこの仕様にしたが、個人的には裾リブ部分は折り返して着た際のバランスが好きだ。イメージとしてはリバースウィーブのスウェットの裾を折り返して着るあの塩梅だ。よりコンパクトなボックスシルエットになり、メリハリのあるスタイリングを組むことが出来る。同様に袖口も少しだけ上に捲って着てみてほしい。これで首だけでなく『手首』部分のスタイリングも上手く調整出来る筈だ。ウール生地の上品な弛みが良いアクセントになってくれるし、スタイリングが程よく小慣れた印象になる。

 

 

 

 

あとはこのニットは家庭用の洗濯機で洗えるようにした。冬でも汗はかくし、これからの時期は飲み会が多くなり、食べ物の匂いが服に付いて気になる人もいると思う。お子さんと遊んでいて汚れてしまうこともあるだろうし、抱っこをしていて涎や鼻水が胸元にべったりと付いてしまった経験をされた方も沢山いるはずだ。服は大切に使っていれば汚れることは少ないかもしれないが、自分がいくら気を遣っていてもどうしたって汚れてしまう状況はあるはずだ。いくら気に入って買った服でも家庭でケア出来ない服はどうしても着る機会は減っていくと思う。少なくとも僕はそうだ。それよりも自分の生活の中で着用しているイメージが湧く服を提案していきたいし、ホームケアが出来る服であることもその提案のうちの1つだ。汚れてしまったら洗濯機で洗える服がどれだけの安心材料になるかを僕自身が知っているので、だからこそこの点は拘りたいと考えている。

家庭で洗えるという安心材料だけでなく、探すと中々見つからない塩梅のデザインとサイズバランスに、上質なウール素材を組み合わせているのは前述した通り。こうして文字に起こしてみると、つくづく隙がないオールラウンダーのドライバーズニットに仕上がっていると改めて思う。

 

 

 

FremderはジップにYKKエクセラジップを使用しているので、同じくエクセラジップを使用した今期のSHINYAやAlgernonのアウターと組み合わせて着てもスタイリングが組みやすい。やはり副資材で共通項を作るとバランスが良いし、簡単に統一感が出せる。個人的には今期AlgernonでリリースしたMA-1に合わせたスタイリングがとても自分好みで、最近は殆どこの組み合わせで着てしまっている。MA-1は首元がスッキリしているので、スタイリングによっては首元がやや寂しく感じることもあると思う。そういう時はタートルネックニットを合わせるとバランス良くスタイリングを組むことが出来ると思うのでやってみてほしい。シンプルなタートルニットでも良いし、もう少しパンチが欲しいなら、MA-1と同じジップを使ったドライバーズニットを合わせると、きっと首周りのバランスはより完成すると思う。

インナーの質が向上すると冬の生活の質は上がると個人的には考えている。主役ばかりを揃えたクローゼットも確かに魅力かもしれないが、主役をより輝かせてくれる名脇役のような存在の服があると、日々の暮らしはとても楽になるし、そして楽しくもなると思う。主役は目立つから服屋でもすぐに見つかるけれど、名脇役はお淑やかだから中々見つからないし手にも取られないことが多い。でもいざ欲しくなったタイミングで探してみると既に売り切れている。こんな経験をした方も少なくないはず。名脇役のドライバーズニット、今ならあります。オススメよ。